福島県南会津町、高野。
まだ葉が出そろわない早春の森に、白い花を咲かせる木があります。
ニオイコブシです。
冬の名残が残る森の中で、ふと空気がやわらぐような瞬間があります。
その変化をつくっているのが、この木です。

もし今、森の中でこのページを読んでいるなら、目の前のニオイコブシに少し意識を向けてみてください。
高野の森では、大きく育った木というよりも、まだ育ちきっていない低木の姿で見られることが多くあります。
その枝や葉に、そっと触れてみる。
葉を軽く揉んだり、枝を折ってみる。
そのときに立ち上がる、さわやかで少し甘さを感じる香り。
花の印象とはまた違う、より近くで感じることのできる香りです。
ニオイコブシとは
ニオイコブシは、モクレンの仲間の落葉樹で、春先に白い花を咲かせる植物です。
葉が出る前に花をつけるため、森の中でもひときわ目に留まります。
香りを持つ花として知られていますが、葉や枝にもさわやかな香りがあり、身近に感じることのできる植物でもあります。
また、ニオイコブシを含むモクレンの仲間のつぼみは、「辛夷(しんい)」と呼ばれ、古くから漢方薬として用いられてきました。
乾燥させたつぼみは、鼻の通りをよくし、呼吸を整える目的などで使われてきたとされ、季節の変わり目の不調に寄り添う植物として知られています。
香りだけでなく、身体に働きかける力を持つ植物でもあります。
ニオイコブシの働き
ニオイコブシは、感覚をやわらかく整える植物です。
その香りは、気持ちを軽くし、緊張をほどくように働くとされています。
また、辛夷としての利用にも見られるように、呼吸や巡りに関わる部分に働きかける性質を持つと考えられています。
はっきりとした変化を与えるのではなく、気づかないうちに状態が変わっていく。
それがこの植物の特徴です。
なぜ、ニオイコブシなのか
季節の変化は、身体にも影響を与えます。
・冬から春への移り変わり
・気温や光の変化
・環境の変化
こうしたタイミングでは、無意識のうちにバランスが揺らぐことがあります。
特に春先は、呼吸や体調の変化を感じやすい季節でもあります。
ニオイコブシは、その変化をやわらかく受け止めるための存在です。
香りとともに、身体の内側にも静かに働きかける。
その両面を持つ植物です。

